赤ペンコラム Vol.2|かわいいだけで終わらせない。AIイラストに“内側の出来事”を入れる実験
完成した絵にあとから意図を足すのではなく、シーンを作る段階から変えるための小さな検証。
AIイラストは、かわいくするだけなら難しくない。
光を入れる。
髪を揺らす。
目をきらきらさせる。
少し照れた表情にする。
それだけで、ひとまず見られる画像にはなる。
でも最近、そこで止まっている気がした。
かわいい。
綺麗。
生活感がある。
それなのに、見終わったあとに何かが残りにくい。
今回の話は、その違和感を少しだけ掘った記録です。
生活シーンは作れる。でも、それだけだと流れる
「おはようカノジョ」では、毎朝のX投稿用にAIイラストを作っている。
朝食を作っている。
玄関で見送っている。
ソファでひとり過ごしている。
カフェで考えごとをしている。
そういう生活シーンは、今の画像生成でもかなり作れる。
でも、並べて見たときに、ふと思った。
これは「凛華の一日」なのか。
それとも「凛華っぽい生活シーンの集合」なのか。
この差は小さいようで、かなり大きい。
生活シーンの集合なら、見た瞬間はかわいい。
でも、すぐ流れていく。
一方で、その場面でキャラクターの内側が少しでも動いていれば、読者の中に残るものが変わる。
たとえば、同じ朝食の場面でも、ただ料理しているだけなら日常の一枚。
でも、「祝うつもりはないふりをしているのに、相手の皿だけ少し丁寧に整えてしまう」なら、そこにはキャラクターの本心がある。
かわいい画像ではなく、キャラクターの一瞬になる。
最初に試したこと
最初は、画像生成用の依頼書にあとから意図を足してみた。
今回のテーマは、彼氏の誕生日。
ただし、凛華は分かりやすく祝うタイプではない。
「特別じゃない」と言いながら、皿の整え方や見送りの視線、相手が出かけた後の静けさに、本心が少しだけ漏れる。
そういう意図を、画像生成用のプロンプトに追加した。
結果、少し変わった。
でも、大きくは変わらなかった。
画像は綺麗になった。
手元の丁寧さも少し出た。
相手がいない部屋の静けさも、少し見えた。
けれど、「作品の芯が変わった」と言えるほどではなかった。
通常版
生活シーンとしては成立している。
でも、「凛華の内側がどう動いたのか」はまだ少し読み取りづらい。
内側の出来事ルール追加版
大きく変わったわけではない。
ただ、手元の丁寧さや視線の落ち方に、少しだけ意図が乗った。
理由は、入れる場所が遅かった
理由は単純だった。
画像生成用の依頼書にあとから意図を足しても、その前に「どんな一日を描くか」はもう決まっている。
完成した料理に、あとから塩を振っているようなものだった。
味は少し変わる。
でも、レシピは変わらない。
本当に変えるべきなのは、画像生成の直前ではなかった。
一日のタイムラインを作る段階。
つまり、「どんな場面を描くか」を決める段階だった。
自作の投稿支援ツールについて
おはようカノジョでは、毎朝の投稿用に、自作の投稿支援ツールを使っている。
名前は DayWeaver。
ざっくり言うと、キャラクター、季節、平日/休日などの条件から、一日のシーン候補を作り、その中からX投稿用のイラスト依頼書を組み立てるための仕組みだ。
この仕組みは、大きく二段階に分かれている。
まず、一日のタイムラインを作る
その中から選んだシーンを、画像生成用の依頼書に整える
今回、最初にいじっていたのは二段階目だった。
でも、本当に変えるべきなのは一段階目だった。
入れたいのは「内側が小さく動く出来事」
次に試したいのは、タイムラインを作る段階で、各シーンに「内側が小さく動く出来事」を入れること。
単なる生活場面ではなく、その場面でキャラクターの心が少しだけ動く。
嬉しい。
迷う。
寂しい。
安心する。
意地を張る。
相手を意識してしまう。
でも、それを泣き顔や大げさな表情で出すのではなく、視線、手元、姿勢、物への触れ方で見せる。
ここが大事だと思っている。
たとえば、凛華なら感情を素直に出さない。
嬉しいときほど素っ気なくする。
寂しいときほど目をそらす。
気にしているときほど手元だけが丁寧になる。
だから、凛華の内側の動きは、笑顔ではなく、腕組み、視線の逃げ、言いかけて止める仕草、整え直す指先に出したい。
今回追加しようとしている項目
投稿支援ツール側では、各シーンに次の5つを持たせる方針にした。
scene_intent:その場面でキャラクターの内側がどう動いたか
visual_focus:イラストで最初に見せたいもの
body_signal:手・肩・姿勢などで何を表すか
gaze_signal:視線で何を表すか
object_interaction:物への触れ方で何を表すかたとえば、キッチンで朝食を作る場面なら、ただ「朝食を作っている」では弱い。
そこに、こういう内側の動きが入る。
祝うつもりはないふりをしているのに、相手のための準備だけは雑にできない。さらに、イラストでは何を見せるのかを決める。
皿を整える指先
伏せた視線
少し力の入った肩これが入ると、同じキッチンでも意味が変わる。
ただ料理している凛華ではなく、気持ちを隠しながら準備している凛華になる。
全キャラ共通。でも出方は違う
このルールは、凛華だけのものではない。
全キャラ共通でいいと思っている。
ただし、共通なのは「内側が小さく動く出来事を入れる」という考え方まで。
その出方は、キャラごとに変わる。
凛華なら、強がりや視線の逃げ、整え直す指先。
月子なら、観察や予定を整える行動。
陽なら、弾む動きや笑顔が一瞬止まる間。
しずくなら、静かな視線やゆっくりした手元。
るななら、元気な動きの中でふと止まる瞬間。
まひるなら、身体を預ける姿勢やゆっくりした瞬き。
日和なら、手を添える仕草や、相手のために整える動き。
同じ「寂しさ」でも、全員が同じ顔をしたらキャラが死ぬ。
感情を入れるのではなく、そのキャラらしい出方に翻訳する。
ここが大事だと思っている。
今回の学び
今回わかったのは、画像生成プロンプトにあとから意図を足すだけでは弱い、ということだった。
もちろん、効果がないわけではない。
表情は少し変わる。
小物は少し増える。
空気感も少し寄る。
でも、それは演出調整に近い。
キャラクターの一日そのものを変えるには、もっと前の段階で「その子の内側がどう動いたか」を編み込む必要がある。
かわいい画像を作るだけなら、あとからプロンプトを足してもいい。
でも、キャラクターの一日を描きたいなら、画像依頼書では遅い。
タイムラインを作る段階で、その子の内側が少し動く瞬間を入れる。
DayWeaverで変えたいのは、絵の飾りではない。
その日のレシピそのものだ。
ジュリの赤ペン
今日の赤ペンはこれ。
かわいい生活シーンを並べるだけでは、キャラクターの一日にはならない。必要なのは、事件ではない。
泣かせることでもない。
派手に笑わせることでもない。
ドラマを盛ることでもない。
その場面で、ほんの少しだけ内側が動くこと。
そして、それが視線や手元や姿勢から読み取れること。
AIイラストを「かわいい」で終わらせないために、次に見るべきなのは、光でも髪でも目の輝きでもなく、たぶんそこだ。



